ども、最近パンを食べていないendyです。
●思いがけない訪問者
一人暮らしをしていると自分しか住んでいませんので、訪問者は全て自分で対応しなくてはなりません。
家族と一緒に暮らしているときには、思いもつかなかった訪問者が時々やってくるのです。
その訪問者は、私が函館で一人暮らしをして間もない頃、仕事が休みになる週末に初めてやってきました。
「ピンポーン」という音に呼び出されドアの向こうを覗いてい見ると、そこには中年のご婦人とやや若い女性が二人、ドアの前に立っています。
昔風のコートを身にまとい腕には手提げのバッグを持って、まだドアも開けていない私の顔をニコニコとみつめています。
恐そうな類の人でもないのでドアを開けると、真面目そうな雰囲気のご婦人が上品に話し始めました。
「私は○○のものです。失礼ですが、何か信仰はお持ちですか?」
およそ信仰などというものにほど遠いところにいる私は、迷うことなく答えました。
「いいえ、特に持っていません。」
すると、何かいいことがあったかのような表情で彼女は続けます。
「それでは、ちょっとお話を聞いていただきたいのですが・・・」
特に予定もない遊ぶ相手もいない時でしたので、私はその話の続きを聞くことにしました。
●だから神なのです
早い話が宗教の勧誘な訳なのですが、彼女はやんわりとそのことを否定します。
「けっして私たちの宗教にお誘いしているわけではありません。貴方に神が存在することをお伝えしたいのです。」
そういうと彼女は手提げバッグから小冊子を取り出し、聖書の話を始めました。
実は私が通っていた幼稚園はカトリックで、聖書には多少なりとも馴染みがあり、年末年始には幼稚園でもらった「聖書かるた」なるものでよく遊んだものでした。
彼女が読んでくれる小冊子の内容は比較的わかりやすく、真面目に聖書を読んだことがない私にも書いてある内容は理解できました。
しかし彼女は、それ以上のことを私に要求してきました。
彼女は、その小冊子に書いてることが本当にあったことなのだと力説するのです。
そういわれると私も黙っているわけにはいきません。
「そんなね、死んだ人間がホイホイ生き返ったりするわけないじゃなーい!」
そういうと彼女はニッコリ微笑んで言いました。
「そうです。だから神なのです。」
そんなやり取りをちょっと困ったような表情を浮かべながら、でもニコニコと付き添いの女性が見守っています。
●本当のこと
彼女たちは、特に断る様子もない私のことを気に入ったのか、毎週やってきました。
毎週週末、必ず部屋にいる自分もどうかとは思いますが、それはまるで決められていたかのように、私の住む1階にパン屋があるアパートの玄関で行われました。
ある日など、私が食うものに困っていると思ったのか、キャベツやじゃがいもといった野菜まで差し入れしてくれました。
そこまでされると邪険に扱うわけにもいきません。
何しろ彼女たちは、遠くから私のためにその野菜を歩いて持ってきてくれるのですから。
とはいえ、私には一向に宗教に対する興味がわきません。
ある日、とうとう彼女は言いました。
「今度、私たちの教会にいらっしゃいませんか?あなたなら必ず神の御言葉をご理解されるはずです。」
あーやっぱり最後はこの話だよなー・・・
仕方がありません。
それならば、私も彼女に本当のことを話さなければなりません。
私は、期待感に溢れている彼女の目を見ながら告げました。
「すいません。実はワタシ、宇宙人なんです・・・」
※ちなみにそれ以来彼女たちは顔を見せなくなりました。
※函館音楽協会春季定期演奏会と第92回函館三曲協会演奏会のリポートをアップ。
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