カナコラム  (更新 月曜:かなこ、木曜:endy )

イエローキャブ by endy

2005/04/07

ども、湯気は登別よりNYのendyです。

●黄色いヤツ

ニューヨークの名物と言えばもうひとつ、あの黄色いヤツだ。
イエローキャブ。
NYのタクシーの車体はみんな黄色いのである。
どうしてなのかわからないが、日本で見る黄色い車よりも明らかにNYで見る黄色い車の方がかっこよく見える。
タクシーなんてそもそもかっこいいも悪いもないのだけれど、NYを走っている黄色い車というだけでかっこよく見える。
それはけっして建設機械のあの黄色ではないのだ。
これは外国の人が日本のお寺や神社を見て、
「オー!ジャパニーズ、ビューティフォー!」
と一様に感嘆するのと同じなんだろうか。

●行き先を告げなければ

そのイエローキャブことNYのタクシーであるが、地下鉄と違うところがひとつある。
それは必ず会話をしなくてはいけないことだ。
そう、運転手に行き先を告げなければいけないのだ。
そこで会話が成立していなければ、どこに連れて行かれるのかわからない。
うーん・・・これは困った。
何せ私の英会話能力は無いに等しい上に、いざという時あがってしまう私にはかなり荷が重い。
とは言え、おそらく二度と来ることもないNYで悔いは残したくないという思いから、初のイエローキャブにチャレンジすることにした。

●金髪のパックロッカー

行き先は、ブルーノートと並ぶNYの有名なライブハウス「スウィートベイジル」。
この日はCDでしか聴いたことのない有名なジャズミュージシャンが出演することになっていた。
ホテルを出てしばらく歩き、タクシーを停めた。
早速乗り込むと、驚いたことにドライバーは若い女性だった。
彼女は黒い革ジャンを身にまとい、短めの金髪で、しかもその短い毛先は外に向かってツンツンと立っていた。
例えてみるならば、メグ・ライアンがパンクロッカーにでもなったとでも言おうか。
もう7年も前のことで、私の記憶は美化されまくっており、信用してもらえないかもしれないが、私にはそう見えたのだ。

●同じミュージシャン

メグ・ライアンに行き先を告げる。
ここからは英語での会話だと思って読んで欲しい。
というか私にはこういう会話をしているように思えた。

「スウィートベイジル?コンバンハ、ダレーがデルノゥ?」
「えーっと、ランディ・ブレッカーっていうトランペット吹く人。」
おそらくメグはドライバーの仕事をしながら、パンクロックバンドをやっているに違いない。
まだメジャーにはなっていないけれど、彼女もきっとミュージシャンなのだ。
そうとなれば、同じミュージシャン、話は盛り上がるはずだ。

私の妄想はつきない。
メグは素っ気なく答えた。
「フーン・・・シーラナイワー。」
確かにパンクロッカーにランディ・ブレッカーは興味あるまい。

●チキンの山

その時気がついたのだが、メグは何か食べながら運転してる。
何か助手席に置いてあって、それをつまみながら運転してるのだ。
一体何を食べてるんだろうと思い、そーっと腰を浮かし助手席を覗いてみた。

驚いたことにそこには山のような小ぶりの骨付きチキンが積んであった。
メグは次から次へとそれをむさぼり食い、チキンの山の隣にはその骨の山が出来ていた。
ちょっと驚きの顔を隠せなかった私の顔を、バックミラーで確認したメグは言った。
「タベルー?」
「あ、はい。」
メグは私にチキンをひとつくれた。

チキンを食べ続ける彼女の隣にはかなりの骨が積まれていった。
すると彼女は何を思ったのか、信号は赤でもないのに車を脇に停めた。
何事が起きたのかと思いメグを見ると、彼女は勢いよく助手席のドアを開け、チキンの山を外にバサッと外に捨て、再び「バタン!」と勢いよくドアを閉めると、何事もなかったかのように車を走らせた。
いや、ゴミを道路に捨てるのは良くないことなのだが、あまりにもその一連の仕草がかっこよくて惚れ惚れしてしまった。
私は骨付きチキンを見るたびに、あのメグ・ライアンを思い出す。

出前コンサートのリポートをアップしました。

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