■FMいるか「THE GIFT」 菅原久仁義
宮崎さんのお母様、美音和先生から、昔、ご活躍されていた頃の話を聞いたことがある。
「ラジオ出演を頼まれて、じいちゃん(ご主人つまり宮崎加奈古さんのお父様、尺八の名人だったばかりか民謡界でも重鎮であり三橋美智也の師匠)と二人で山の上のNHK放送局に行ってよく演奏したんだよ。あの頃は演奏している時のそのままを電波にのせてラジオで流すんだからねぇ。『あっ、失敗したからもう一回!』ってな訳にいかないのさ。」
昔の人はすごい。今じゃ何回も取り直しできるし、どうしても出来ないところは部分録りして挿入することだって出来る。
生放送となればさぞ緊張感のある演奏になることだろうし、根性と気合いも養われるのだろう・・・。そう思ったことを記憶している。
ところが この現代において、その何物にも代え難い生放送の緊張感を甦らせてくれる企画があるという。
「FMいるか」という函館の放送局であり、番組名は「スペシャルライブ〜THE GIFT〜」だ。
この番組出演のご指名を受けた宮崎さんが、尺八とのデュオでの出演を希望し、私がお相手をさせて頂くことになった。
願ってもないチャンス。
こんなすごい経験はタイムマシンに乗って時を遡らなければ出来ないことだ。
さすがに本番は期待通り?の緊張感。
練習や普通の演奏会では体験できない、異質な雰囲気と心の高まりをおぼえながらコンサートは始まった。
人は集中力により記憶が凝縮されてしまうものなのか、演奏中の記憶は演奏終了と同時に充足感の固まりと化して、細かいことは殆どおぼえていないのである。
心地よく貴重な音楽体験であったことは確かである。
十数年前の函館での尺八ジャズツアー、K's crewへの参加演奏、昨年の国際音楽の日おもしろコンサート、そして THE GIFT。
他の都市では経験したことのないことばかり。
本当に函館という町は何かひと味違う。
きっと情熱的な人が集まった町なのかも知れない。
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