私の父は会社勤めをする一方で「尺八奏者」の顔を持つ人でした。
雅号は「湖舟−こしゅう−」。
若くして病に倒れ、尺八を吹くことは叶わなくなり、私は父の吹く尺八の音を耳に留めてはいません。
「美しい音色で情感のこもった尺八を吹く人だった。」
父を知る人達は一様にそう話してくれますが、私はセピア色の写真を眺めては、空しく想像するだけです。
「吉田晴風」という尺八家の奥様・恭子先生が、母・宮崎美音和の東京の恩師というご縁から晴風師と父との親交も厚く、精神的教えを受けたことを父はよく話していました。
「無我の境で演奏を・・・。」が師の座右の銘だったとか・・・。
我が家にある晴風師直筆の色紙には「竹韻通神」と書かれています。
そんな思い入れもあって、4月に出したCD「〜奏〜」の中でも、晴風師作曲の「かもめ」「子守唄」の2曲を演奏させていただきました。
尺八の味わいのある深い音色を聴くと何故か胸が
いっぱいになるんです・・・。
竹林に居て風を聴いている・・・そんな心地が
して・・・。
私の中に居る父が蘇るのでしょうかね・・・。
『わが宿の いささ群竹 吹く風の
音のかそけき この夕べかも』(大伴家持)
かなこ ※FMいるかリポート
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