カナコラム  (更新 月曜:かなこ、木曜:endy )

幻の餞別 by endy

2005/06/02

ども、今ドキの中学生の気持ちはわからないendyです。

●バンドを続けるということ

私が今までで一番長く活動しているバンドは、もう10年近くほぼ同じメンバーでやってきました。
途中いろいろなこともありましたが、それでも長く続けてこれたのは、私が若い方に入るぐらい平均年齢の高いせいもあり、よくいえば大人のバンドであったからだと思います。
それでも音楽をやっている我々は通常の社会人よりは、考え方も行動も子供じみたところがたくさんあります。
今さら大人としての成長は、私も含めて望めないのは言うまでもありません。
幾度となく解散の危機もやってきましたが、それでも今まで続けてこれたのは、いいメンバーに恵まれたからなのでしょう。

●加藤茶のいないドリフターズ

先月、そのバンドのギターH氏がしばらく東京に行くという話になりました。
彼はラーメン屋さんをやっていたのですが、最近なかなか客足も伸びず、唯一頼みの綱であった隣のパチンコ屋さんが撤退したため、店を閉めることになったのです。
それで心新たに東京へラーメン修行にでかけると言います。
期間も1年になるのか3年になるのかはっきりしないらしいのです。

私たちのバンドはH氏がいなくては成立しません。
加藤茶のいないドリフターズみたいなものになってしまうのです。
これはバンドの解散とまではいかなくても、当面の間の活動休止を意味します。
それほど頻繁に演奏活動をしていたわけではありませんが、はっきり活動できないとわかってしまうとやはり寂しいものがあります。

●餞別を渡そう

そんな彼を元気に送り出すために、バンドのメンバーで歓送会を開くことにしました。
料理はメンバーが手作り料理を持ち寄り、楽器も持ち込んで簡単なライブまでしながらという演出も考えました。
会場となる部屋にはマイクもスピーカーもセットして、さながら小さなライブハウスのようです。
H氏を送り出すにあたり、気持ちだけではありますが、餞別を渡すことにしました。
メンバーから五千円ずつ集め、ひとつの袋に入れ、バンドからということ年長者であるバンマスに預けておきました。

●乾杯の前に・・・

さて、メンバーを含め10名ほどの出席者が全員集まったところで、私が開会の挨拶をします。
「本日は皆さま、この良き日にH氏を送り出すために集まっていただきありがとうございます。美味しい料理を食べ、いい音楽を聴きながらH氏を楽しく送り出してあげていただきたいと思います。それではまず乾杯の音頭を・・・。」
そう言いかけた時、
「あ、ちょっと待って!その前にみんなに話しておきたいことがあります。」
H氏が突然マイクをつかみ話し出したのです。

『えー、皆さんにはこのような会を開いていただきまして、ホントに感謝しております。
実は、4日ほど前に以前の店の大家から連絡があり、「同じ場所で違うラーメン屋をやってみないか?」というお話しが出ました。
本日お昼にオーナーとも話し合い、また以前と同じ場所でラーメン屋をやることがほぼ決まりました。
皆さまには、いろいろご心配をおかけして・・・。』

●回収

聞いている我々は目が点になり、言葉も出ません。
私の横に座っていたバンマスを見ると、しまっていた餞別の袋を取り出し、中から自分が出した五千円を抜き取っています。
H氏はまだ東京行きが中止になった経緯を説明していますが、その目の前で餞別の袋と五千円がメンバーの間を行ったりきたり・・・。

また一緒にバンドを続けられるのは嬉しいことですが、「何でもっと前に言わないのだ!」とみんなでコンコンとH氏に説教をしたのは言うまでもありません。
もちろんその表情はニコニコでしたけど、(^_^)

函館邦楽舞踊協会研鑚会函館三曲協会定期演奏会のリポートをアップしました。

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